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8.52013
V-Rayマガジン(英語版) PDF配布中. Vlado氏にインタビュー
V-Ray.com (ChaosGroupオフィシャルサイトです)にて SIGGRAPH 2013会場で配布していた V-RayマガジンのPDF版が配布されています。
マガジンの目玉、17~18pのVlado氏へのインタビューを翻訳してみました。
Vladimir Koylazov (Vlado) 氏に V-Ray 3についてインタビュー!
Vlado氏について:
ChaosGroup創設メンバーの一人であり、15年以上に渡り3Dプログラムの開発・研究を行なっています。V-Rayコア部分の開発者として世界的に著名。Vlado氏はレンダリング理論のエキスパートでもあり、3Dレンダリング・コミュニティの熱心なサポーターでもあります。ChaosGroupフォーラムで直接ユーザーの要望や質問に答えている事でも有名です。
どのようにV-Rayが生まれたのか教えて頂けますか?
ブルガリアの首都ソフィアにて1997に3Dデザインとアニメーション制作スタジオとしてChaosGroupはスタートしました。初期のプロジェクトで3dsMaxの環境効果を適切にブレンドする必要がありましたが、利用できるプラグインがありませんでした。そこで自前でプログラムを作る事になり、数年後に”アトモス・ブレンダー”と言うプラグインが誕生しました!このアトモス・ブレンダープラグインではリアリスティックな影を投影する為にレイトレーシング法が必要で、その為に自前のレイトレーサーをプログラムし始めました。このレイトレーシングエンジンが非常に高速でスタジオ内で評判が良かったので、もっと一般のデザイナーやアーティストにも需要があるかもしれないと思い始めました。これがきっかけでレンダリングシステムとしての「V-Ray」の開発が公式にスタートしました。2001年の終わりに Peter氏 (ChaosGroup創設メンバーの一人)と私(Vlado)は V-Ray for 3dsMaxとして最初のパブリック・ベータを公開しました。そして 2002年3月13日にChaosGroupから正式に「V-Ray for 3dsMax」を販売開始しました。反応は圧倒的で瞬く間に高速なグローバル・イルミネーションおよびレイトレーシング・レンダラーとして導入が進みました。現在V-Rayは市販されているレンダラーの中でもベストなライティング、シェーディング、レンダリングソリューションとして広く認められています。また今も毎日のようにアーティストから意見を貰い開発を続けています。
新バージョンに追加する機能はどのよう決めているのでしょう?
私達は常にユーザーから質問を貰っていて、その中には具体的な要望が含まれている事があります。その要望が問題を解決する為により効率的と考えられる場合、既存のコードに改良を加えます。大抵の場合もっと高速に処理するか、よりメモリを消費しない方法か、より解りやすいUIパラメーターを追加する事になります。それが新機能となります。また私達は業界のトレンドを常にリサーチしており、良いソリューションは積極的に導入するようにしています。
次バージョン「V-Ray 3.0」の主な新機能は何ですか?またそれはどれくらい便利でしょうか?
V-Ray 3.0では高度なレンダリング機能の追加や速度改善はもちろん、アーティストの日々の作業をより簡単にする多数の新機能と機能改善を行います。例えば単純化したレンダリング設定UI新しく追加しました。この新しいシンプルUIでは少数のパラメーター(時間を取るか、品質を取るか)を指定するだけで最適なレンダリングを実行させる事ができます。もちろん上級ユーザーはV-Rayの全てのパラメーターにアクセスできます。またV-Rayプロダクションレンダラー側でプログレッシブレンダリングを行う機能も加えました。また新しい XMLベースの Vismatsライブラリーでユーザーはプラットホームを越えてV-Rayのマテリアル・リソースを共有する事が可能になります。これは建築設計、プロダクトデザイン、VFX、ゲームデベロッパー等全てのユーザーに恩恵をもたらすでしょう。さらにSony Pictures Imageworks社で開発されたオープン・シェーディング言語 (OSL)をサポートします。より手軽にアーティストレベルでもカスタムのシェーダーを記述する事が可能になるでしょう。
V-Rayの柔軟なレンダーエレメントシステムはレンダラーと合成ソフトを接続するとても重要なソリューションです。V-Ray 3.0では OpenEXR 2.0 をネイティブにサポートしDeep Imageを出力する事ができます。V-Rayは今後も最新の合成プロセスをサポートし続けます。V-Ray 3.0では内部的な最適化によりヘアーのレンダリング速度が15倍程高速化されています。またV-Ray3.0ではalembicと.vrmeshにHairを格納しレンダリングをサポートします。また新しい高速なレイトレースベースのフォトリアリスティック・スキンシェーダーを提供する予定です。さらにXeon Phiのようないくつかのハードウェア・アクセラレータもサポートします。なおV-Ray 3.0は現在も開発中でユーザーのリクエストによってさらに新機能が加えられるでしょう。(新機能リクエストは support@oakcorp.netまで )
レンダリング技術は将来どうなりますか?
現在私達は純粋な光のシミュレーションを行える段階にいます。数十年前までは実用的ではなかった純粋パストレーシングのような方法も実用になる程ハードウェアが進化しています。今のレンダリングトレンドは、高速化する為に近似的な手段を取るのではなく、スマートなレイトレーシングアルゴリズムを使ってシンプルにレンダリングする事です。またシーンの複雑さは年々倍増しており、テラバイト級のオブジェクト、テクスチャー等のリソースをより効率的に処理できる事が求められています。またクラウドレンダリングもHotなトピックです。ChaosGroupでも既にいくつかクラウドソリューションの実験を開始しています。クラウドレンダリングが直ぐにローカルなレンダーファームを置き換えるとは考えませんが、将来的には重要なソリューションの1つにになると考えています。GPUレンダラー(V-RayRT)もアプリケーションにより高いレベルで組み込まれ、これまで以上に活用される場面が増えてくるでしょう。
10年以上に渡ってV-Rayを開発していますが、どのようにモチベーションを維持しているのですか?
私は単に好きな事をやってきただけです。その点では非常に幸運だったと言えるでしょう。楽な仕事ではありませんが結果には満足しています。