国内ZBrushアーティストへのインタビュー第一弾
原型師 浅井真紀 さんにインタビューしました!
フィギュアの原型や構造設計、プロデュースなどを行なっています。最近の製品では、figmaというシリーズの基礎設計や造形、プロデュース。武装神姫シリーズの基礎設計。ここ数年はデザインの仕事を行う事もあって、初音ミクappendというキャラクターの衣装デザインや、QUMARIONというデバイスのデザインを手がけました。
業界に入ったのが1990年ですから、24年前になります。もっとも、最初はそれで食べていけるというような状態ではなく、勉強させてもらっていたという感じです。 2年メーカーの後、更に2年は造形を請け負う工房に所属、それからフリーです。
単純な形を切削機で削り出す、というような経験をデジタルモデリングと呼ぶのであれば17年ほど前の、ローランドのMDX-3という切削機が発売された時です。 でもトポロジーを考えながら作らねばならないポリゴンモデリングに慣れる事ができず、2次元で作図した部品を切り出す切削ばかりしていました。 Rhinocerosを触り始めたのが5年程前ですが、やはりこれも単純な形や関節などの設計用途で、造形自体をデジタルで行うようになったのは、ここ2年くらいだと思います。
最初に触ったのはSculptrisです。トラックボールを使い、遊び気分で触ってみたのですが、それでもそれなりに造形が出来た事に驚きました。 苦手だったトポロジーを考えなくて良いというのは、デジタル化に踏み出した大きな理由です。 その後、Sculptrisの上位グレードなのだろう、くらいの感覚でZBrushを購入したのですが、当時はDynameshの導入前で、トポロジーを考えなければならず、また基本的な動作にも馴染めず、一年ほど死蔵していました。 基本的な動作に馴染めなかったのは、タブレットを使わずトラックボールを使っていた事もあると思います。 その後、ZBrush4R2でDynameshが導入され、ZBrushを仕事に使っている友人も居たもので、彼に助けて貰いながら覚えました。 実際に仕事に導入するようになったのは一年半ほど前だと思います。 他のスカルプトソフトなども少し触ってみましたが、ZBrushはブラシ感覚が肌に合っていて、今はスカルプト作業の殆どがZBrushです。
基本的な造形から、出力前のブーリアンまで、造形における幅広い行程で使っています。他のツールでモデリングしている時も、上手く形が整わない時はZBrushで調整したりもします。
ただ、あくまで造形、それも出力する前提に限って使ってきたので、基本的なスカルプト以外の機能は殆ど知らないんです。
レンダリング関係はさっぱりわかりませんし、出力機で再現されないレベルの細かなノイズなども使いません。
これまでポリゴンモデリングを避けてきてしまったので、UV展開など、当たり前の事も苦手です。
ですから、ZBRUSHで出来る事の半分以下の機能しかつかえていないのではと思います。これは反省している所です。
ZBrushで形をつくり、平滑な面やハードサーフェスが必要なものは他のツールでリトポしつつ再度モデリングを行います。 最後にスジ彫りなど細かなディティールなどを施す為に、またZBrushに戻すことも多いです。 正確な寸法が必要なものは、他のツールを使用して関節などの部品を作り、それに合わせてZBrushで造形する、という手順を行う時もあります。
基本的な造形に関してはほぼ全部ZBrsuhです。
ただ完全に関節等の寸法精度が必要なモノに限ってCADなど、他のツールも使用しています。主に整理された曲面などの面貼りに使用しています。
最初から全てCADなどで作ってしまうと、試行錯誤をしながら形を変えていくには不向きで、その度に面を貼り直す事になり、自分の場合はとても時間がかかります。
なので本当に最後の仕上げや関節のためだけに使うといった限定的な使用になっていますね。
フィジカルなスカルプトを行っている時、ずっと夢見てきた事が、「造形物を支えられる、空気のように透明な手が欲しい」という事でした。 全ての部品を組み合わせてバランスを見たり、柔らかい粘土を焼き固める事なく、自在な角度から造形したりできれば、と。 現実では不可能な事ですが、ZBRUSHでの作業ではそれが可能になります。 また、粘土は基本的に押し込むものです。盛り付ける事はあっても、形を出すときにはヘラで押しながら形を出します。 つまんで引っ張り出すという感覚は物理的にありませんから、フィジカルでは存在しないヘラを使えるのは大きな利点です。 弱点は、切ったり磨いたり、という形を綺麗に整える作業が、フィジカルな造形よりも直感的では無い事です。 これは造形よりも仕上げや分割などの段階で感じることが多いです。
ブラシではスタンダード、クレイ、ムーブ、トリムダイナミック、それとネットからダウンロードしてきたsm_creaseというブラシをよく使います。
これまではデフォルトのままで、最近になってようやく自作のブラシを試し始めましたが、火を使い始めたばかりの原始人のような段階です(笑)
よく使う機能ではダイナメッシュ、ミラーアンドウェルド、デシメーションマスターは良く使います。
逆に、多くの人が当たり前に使われるであろうマルチサブディバイド機能を殆ど使いません。Zスフィアやシャドウボックスも使ってないですね。
ダイナメッシュありきでZBrushを使えるようになったゆえの事ですが、他のZBrushユーザーの人から見るととんでもない話かもしれませんね。
ダイナメッシュは、他のソフトで上手くいかなかったブーリアンを可能としてくれますので、出力の時にとても助かります。 表面は荒れますが、今のダイナメッシュくらいの細かさであれば、出力すればわかりません。 デシメーションマスターも出力時や、他のソフトに参照メッシュとして持っていくには本当に助かります。 トランスポーズの機能や、トランスポーズ表示も気に入っていて、他のソフトで作業をする時には「ZBrushのようなトランスポーズがあれば……」と思う事が多いです。
元々粘土を使っていた人であれば、強くお勧めします。 他の3Dソフトでは、形をつくるための考え方を粘土から大きく改めねばなりませんが、ZBrushは粘土で培った感覚の多くを活かす事ができます。 フィジカルで良い造形を出来た人であれば、ZBrushはその経験を活かせるソフトだと思います。 ただ、インターフェイスなど独特であるのは事実ですので、簡単に始められるという誘い文句での紹介は悩むところではあります。
夢や願望も含めて、希望だけを上げればたくさんあります(笑) カーブを現状のような機能の他に、スプラインのようなポイントで編集できる機能。 正確なスジ彫りを簡単に入れる事は、どのソフトを使う時も悩みどころですので、スカルプトの表面に直接スプラインやベジェを書けるような感じになるととても助かります。 また、そのカーブにポリゴンを吸着させる事で、髪の毛やハードサーフェスのエッジを綺麗に整える事が出来るようになれば嬉しいですね。 他には、ダイナメッシュの部分的な保護機能や、細かな事ですが、クリップカーブでのバリが出ないようになったり、ダイナメッシュ時にどのような細かさになるのか、目安の格子が表示されると、自分としては効率的になってとても助かります。